青に焦がれて。
あと2時間もすれば交通機関が止まるのに、家に帰れなくなっても関係ないと言う顔付きで人々が行き交う。

近くでイベントがあったから、今日は尚更人で溢れ返っていた。


あたしが乗るバス停は、改札口の前を通ると少し近道。

ちょうど電車が停車したのか、改札口から人の波が押し寄せた。

その波の間を交差し抜け、人々はぶつかる事なく器用に波を突破する。

あたしも遠慮なく波の流れを遮っていると、左から来た人とぶつかりそうになった。

あたしが1歩、相手も1歩、足を出せば交差してしまう距離になっていた。

だけどお互いに1歩を出さず、2人で立ち止まってしまった。

止まるんじゃなかった。

心の中で息を付いた。だって相手が止まるなら、ぶつからずに進めたのに。


お互いに譲りあっても仕様がないので、あたしは相手の顔を見た。

言葉には出さず、どうぞ。と視線を送った。

「あっ!」

あたしの顔を見た相手は驚いた顔をした。


少し明るめの茶色にフワフワと緩いパーマをかけた男性。

あたしは知らない。この町に友達はいないから。

「私服だったから分かんなかった!パン屋のおねいさんでしょ!?」

ギョッ!とした。

まさか顔を覚えられてるなんて思わなかったから。

「そうですけど。」

「やっぱりね。」

頷くと彼は人懐っこい笑顔を見せた。
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