青に焦がれて。
パン屋のおねいさんって言ってるから、買いに来てくれるお客さんだって事は分かるけど、

予定がないからシフトに出たくらいだけど、あたしは彼を知らない。

「おねいさん暇?」

そんな事言われると警戒してしまう。

表情に出ていたのか、

「大丈夫!変な事しないから。」

「はは。」

あたしは頬を引き攣らせながら、空笑いした。

「ちょっとだけ。30分でいいから!」

彼はなかなか引かず、「30分なら。」と、あたしが折れた。



今日は彼の誕生日だと。

友達と遊ぶ予定だったが、皆デートやらバイトに行ってしまったらしい。

「薄情だよな。」

ちょっぴり寂しい話なのに、彼は楽しそうに経緯を話してくれた。

「あいつらに感謝だよな。こうやって、おねいさんに会えたんだから。」

連れて来られた駅の近くにある公園のベンチに座り、乙女心がくすぐられるセリフを吐いた。


あたしがハタチだったら、あたしが10代だったら、

彼のセリフにやられてたと思う。

「幾つになったの?」

「24!」

あたしにもそんな時期があったなと思いながら、

「おめでとう、お誕生日。」

彼が買ってくれた缶コーヒーを、彼が持つコーヒーにカンッと合わせた。

「おねいさん、ありがと。」

無邪気に喜ぶ彼は歳よりも下に見え、そんな彼が羨ましいと思った。

何だか楽しそうで生き生きしている姿が。
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