青に焦がれて。
楽しかった、いや、楽し過ぎた学校生活。

あれから10年近く経ち、制服を着たらコスプレになっちゃうけど、

未だに心は、あの時の楽しさを求めてしまう。



だからかもしれない。

いつもバッグにシャボン玉が入っているのは。


「好きだよな、シャボン玉。」

右手は浩介と手を繋ぎ、左手にはシャボン玉。

キャラクターの体を押すと液が付いた輪が出てくるワンタッチ式のシャボン玉を吹きながら歩いていた。

「楽しいよ。」

浩介の前にシャボン玉を出した。

「はい。」

フーと吹き掛けると、小さい泡が連続で出てきたけど、直ぐに止まった。

「下手っぴ。」

あたしはクスクス笑いながらシャボン玉を吹いた。

街灯の明かりに反射して、シャボン玉はフワフワと夜空に舞い上がっていった。

透明なシャボン玉は、空の黒と一体となり、街灯の明かりが届かなくなる所まで飛んで行くと見えなくなった。


浩介が止まったので、あたしも必然と止まった。

「亜季。」

「ん?」

あたしはシャボン玉の行方から目を離し、浩介の方に顔を向けた。

影のかかった浩介の顔が近付いて、唇と唇の距離が0センチになった。

「どうしたの突然?」

「亜季もシャボン玉と一緒に飛んで行きそうだったから。」

「まさか!あたし飛べないもん。それに泳げないし。」

浩介の顔から寂しそうな影が消え、

「それ関係ねぇだろ。」

あたしの手を引いて歩き出した。

家に着くまで、あたしはもうシャボン玉は飛ばさなかった。

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