青に焦がれて。


あたしがパン屋で働き始めて漸くパンの値段が覚えられた頃、

毎朝8時半頃、毎日パンを買いに来るお客さんがいた。


新幹線も私鉄もJRもバスも、全ての公共機関が止まるこの駅は、朝の8時代は忙しさのピークを迎える。

7台あるレジもフル回転。

毎日買いにくるお客さんもいて、何人かは毎朝の人だと認識し始めた。


その中に浩介も居た。

いつ頃から買いに来ているのか分からないけど、朝の通勤ラッシュには不似合いな格好だった。

少し襟足が長い金髪にサングラスをかけて、ギターのケースを持って。

そんな出で立ちでトレーとトングを持ち、スーツ姿のビジネスマンに混ざりレジに並ぶ姿は浮いていた。

目立つ姿をしていた彼は、朝の混雑時でもあたしの目に止まった。



ある日、最近見ないなと気付いた。

いつ頃から見かけなくなったかは定かではない。

ギターのお兄さん見ないなって、そんな感じ。

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