【完】─片思い─
第1章 あたしのキモチ
春が過ぎようとしている。
夏の風が…そっと吹き始める。
「稲実」
そして、そんな風に自分の髪が揺れる。
「ん…?」
あたしの名字を呼んだ彼は、あたしのノートに何かを書いていく。
髪の毛の匂いが、あたしの鼻をくすぐる。
そんな瞬間に、胸が高鳴る。
何か書き終わったみたいで、あたしにそれを見せようとする。
あたしはそれを見た瞬間、吹きそうになってしまった。
ノートに書かれたのは、数学の授業をしている笹木先生の似顔絵。
似すぎて、笑った。
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