【完】─片思い─

季節は、秋が終わり…冬になった。

毎日が寒くて、マフラーと手袋は外せない。

夜に降った雪が、道路を白く埋めている。

あたしは、その白色を消すかのように歩いていく。

それを意識すると、自分の記憶も消して欲しい…なんて、思ってしまう。

りっちゃんは、何も言わなかった。

ただ、「ごめんね。言葉が…見つからないや」って言っていた。

紗季と東が別れたのを知っているのはあたしと、流。

紗季が…言ってくれた。

「あたし、東とは別れた」

そう、強く言い放ったんだ。

でも、その言葉に返す言葉がわからなくて、あたしはこう返すしかなかったんだ。

「…そっ、か」

『ありがとう』

そんなことを言ったら、また平手打ち。

『ごめん』

これも平手打ちをされるに決まっている。

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