【完】─片思い─
「…今まで、ごめん。俺、稲実はすっげぇ良い奴で、俺の事は友だちだととしか思ってないと思ってたんだよ。悩み事とか、話してくんないし」
「…」
「だから、俺の一言で何度も稲実を傷つけた。それに、気づけなくてごめん」
「…」
「…ごめん。紗季が…好きなんだ」
「…うん、知ってる。何年…東を見てきたと思ってるの?」
「…」
東は、あたしの手を強く握るだけだった。
「稲実、ありがとうな。俺なんかを…好きになってくれて」
「…その言葉、クサいよ?」
「ははっ! そうだなっ」
「…ありがと、今日。話、してくれて」
「うん…」
「ありがとう、ちゃんと…返事してくれて」
「…うん」
気づいたら、あたしの目からは大粒の涙が溢れていた。