その一瞬を、焼き付けて。-短編集-
やっぱり、あなたは。【強気彼氏×病人彼女】
もう長くないこの命を
私は知っている
消えそうな灯は
ゆらゆら、揺れていた
『来なくていいって言ったのに。』
少し冷たい風が吹いて秋の訪れを肌で感じた。
病院の屋上でパジャマにカーディガン一枚では、さすがに体が冷えちゃうかな、なんて思いながら。
『生憎、来なくていいと言われて来ないほど人間出来てないんだよ。』
あぁ、そうだった。
あなたはそうゆう人間だった。
『相変わらずだね、そうゆうところ。』
くすっと笑ってしまう。
こんな何気ない時間が久しぶりで、懐かしくて、愛しくて…
ずっとあなたに背を向けていた。
とてもじゃないけど、顔を見て話したりなんて出来ない。
知られたくないの。
気付かれたくないの。
『…どうして病気のこと、俺に言わなかったんだ?』
一瞬、全てが止まる感覚に陥った。
知られたくないのに、あなたは知ろうとする。
隠したいのに、あなたは暴こうとする。
あなたは、そうゆう人だった。
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