その一瞬を、焼き付けて。-短編集-
この愛を、刻み込もう。【腹黒魔法使い×純情人魚】
いつも君を見ていたのに
君は僕の視線に気付かないまま
他の男に恋をした。
深海にひっそりと作られた人魚の集落。
僕はここで唯一の魔法使いとして住んでいる。
人魚は体が弱い。
海が汚れると、それは人魚たちにも悪影響を及ぼす。
そんな時に僕の魔法で人魚たちを助けて生存させる。
それが先祖代々受け継がれている役目である。
今日も平穏な日だと思い、書物を読んでいたその時、ドアが開く音がした。
『あの…魔法使いの方、ですよね…?』
振り返ると、君がいた。
少し怯えながらも話しかけて、少し落ち着かない様子で。
『そうだけど、何か用?』
『えっと、その……あの…』
どうやら、言いにくそうだ。
大体は体調が優れないという人魚が来るのだが、そういうわけでもなさそうだ。
そうこう考えていたら、君は決意を決めたらしく、まっすぐ僕を見つめてきた。
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