その一瞬を、焼き付けて。-短編集-
『分かった。』
僕は後ろにある棚から青い液体の入った小瓶を取り出し、差し出した。
『これを飲めば君は人間になれるよ。』
『あ、ありがとうございます!!』
『…本当にいいの?』
『はい、後悔はしません。あのお方に…王子様に逢えるのなら。』
とても幸せそうな顔で君は液体を一気に飲み干した。
あぁ、馬鹿だな君は。
その瞬間、君は倒れた。
なんで気付かないんだろう。
そんな人間なんかより、ずっと昔から君を見ていた僕の存在に。
ずっと好きだった。
優しい微笑みも、歌声も
僕だけのものにしたかった
なのに君は僕に気付かず
人間に恋をした
とても罪作りな君に
この愛を、刻み込もう。
もう二度と
僕は君を離さない
.