その一瞬を、焼き付けて。-短編集-
甘い音色と、共に。【バレンタイン企画】
空から降り注ぐ雪は
静かに街を染めてゆく
あともう少しで
あなたに逢える
あと五分であなたと待ち合わせした十八時になる。
私が指定したのは学校の音楽室。
あなたと初めて出逢った思い出の場所。
あなたと出逢ったのは去年の夏。
私は放課後によく音楽室をかりてピアノを弾いていた。
学校でなら音量などを気にせず弾けるので気に入っていた。
その日もいつものようにピアノを弾いていた。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ場所。
ただ、ひとつだけ違ったことがあった。
それは…
『ねぇ、クラシック以外も弾けるの?』
あなたが訪れたこと。
静かにドアを開けて音楽室に入っていたらしく、近くの椅子にあなたは座っていた。
私はピアノに集中していた為、まったく気付かなかった。
『え、…メロディーが分かれば多分弾けますけど…』
馴れ馴れしい人。
それが第一印象だった。
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