その一瞬を、焼き付けて。-短編集-
甘い音色と、共に。【バレンタイン企画】

空から降り注ぐ雪は

静かに街を染めてゆく

あともう少しで

あなたに逢える











あと五分であなたと待ち合わせした十八時になる。
私が指定したのは学校の音楽室。
あなたと初めて出逢った思い出の場所。



あなたと出逢ったのは去年の夏。
私は放課後によく音楽室をかりてピアノを弾いていた。
学校でなら音量などを気にせず弾けるので気に入っていた。



その日もいつものようにピアノを弾いていた。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ場所。



ただ、ひとつだけ違ったことがあった。



それは…



『ねぇ、クラシック以外も弾けるの?』



あなたが訪れたこと。



静かにドアを開けて音楽室に入っていたらしく、近くの椅子にあなたは座っていた。
私はピアノに集中していた為、まったく気付かなかった。



『え、…メロディーが分かれば多分弾けますけど…』



馴れ馴れしい人。
それが第一印象だった。



.
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop