【BL】最終回送まで…
走ったせいで心拍数が上がっているのか、それとも、あの笑顔に心拍数を上げているのか。
どちらにせよ、心臓の廻るテンポが早過ぎて苦しかった。
ただ、走ってからかなり時間が経っても心臓は治まらなかった。
たまたま座った位置から見える横顔が男の僕が見ても格好良くて、見ないように目を反らしても、気付くと目は運転手を追っていた。
ようやく動悸も落ち着いた頃、僕が降車する【日高高等学校前】に着いた。
僕は何事もなかったように、PASMOをタッチパネルに置いて降車しようとした。
恐らく、それが絶対的な要因だった。
―――「行ってらっしゃい」
まるでスローモーションみたいに時が流れて、世の時間の流れ方とその時間の流れが不釣り合い過ぎた為にバスのドアがそれを断ち切るように閉ざされた。
その瞬間、確信した。
僕はあの人を好きだと。
有り得ないぐらい爽やかな笑顔が、声が、細められた瞳が
僕の中にある全てを奪っていった。
【僕】と言う容器だけがそこに置いてきぼりにされたみたいだった。