おんりー☆らう゛
まず、『出逢い』。
――――――4月下旬。
満開の桜が散る通学路を、1人の女の子が歩く。
「あっ!」
その子は視界に入った人物に、声をかける。
「こーきー!!」
目の前を歩いていた、金髪の男が振り返る。
男は、身長約180㎝。
短髪で金髪で、ワックスを立てている。
髪の左側と眉には剃り込みが入っていて、ピアスは眉と口元と、耳に合計10個ほど。
目は細く、その鋭い目付きはなかなか人を寄せ付けない。
そしてご想像のとおり、服装は乱れ着。
学ランの前は全開、ダルダルセーターに、開いたカッターの中からは赤いTシャツにネックレス。
…とまあ、世間から見ればバリバリの怖そうなヤンキーなのだが…
「よっ」
彼女の顔を見た男は、外見からは考えられないほどの無邪気な笑顔を見せた。
「おはよ、奈々」
男が「奈々」と呼ぶ女の子は、身長150㎝ほどの、茶髪でストレートのロングヘアー。
化粧も濃くなく、見た目はギャルなどではない、普通の女の子だ。
「おはよっ!今日は遅刻してないんだねw」
「はあ?俺がいつ遅刻したよ?」
「…ほぼ毎日ですけど。」
「へーへー。そーでしたねっ」
彼らが出会ったのは、入学式。
そして今もう、ちゃっかり手を繋いで登校している。
彼らの出逢いは、それはもう有りがちなパターンだった。
まずは、『出逢い』の話から。
< 1 / 206 >