おんりー☆らう゛
「ちょっとあんた!!!」
奈々が、歩いていく男の背中に向かって叫んだ。
その場にいた誰もが奈々に視線を向け、凍りついた。
「あ゛ぁ?」
男は、イライラと鋭い睨みをきかせながら振り返る。
そして…一瞬、目を見開いた。
しかし、奈々はそれに気づいていない。
「さっきから何やってんの?乱暴はやめなよ!」
「……は?」
男は、さっきの声のトーンとは全く違う、気が抜けたような声を漏らした。
奈々は真っ直ぐ男を睨みつけ、周りの人々は息を飲んでいる。
「あんた…名前は?」
奈々が、ふうっと力を抜いて、男に話しかけた。
男は再び元の目付きに戻し、それでも小さな声で答えた。
「…池谷 聖」
周りの人々が、心の中で声を揃えて思った。
ヤ…ヤツがしゃっ…喋った!!
「池谷 聖ね…。あたしは浦安 奈々。あんたと同じクラスだよ。ねぇ、なんで暴力なんかするの?」
「……てめぇには関係ねぇだろ。」
「あ…ちょっと!!!」
そのまま男は、奈々に背を向けて歩いて行ってしまった。