ちっぽけな世界の片隅で。
わたしは、今日一番の大きさで、目を丸くひらいた。
そこに書かれていたのは、テストの要点じゃなかった。
きれいにつづられた、文章。
便覧に書かれていたものよりも、もっとていねいな文字。
『宇宙をはしる』
いちばんはじめの行には、そんな言葉が書かれてあった。
…これ、もしかして、小説?
読書感想文用にしか本なんか読まないわたしは、慣れない文章のかたまりに、首をかたむける。
日記とはちがう。
日常とはまったくちがう世界の、話。ファンタジーって、いうんだろうか。こういうの。
活字は苦手なくせに、読みはじめたら、次々と目が文章を追っていた。
主人公は、男の子。
男の子は、とてもやさしくて、いつも笑顔。みんなから好かれていて、おだやかな日々を送っていた。
なのにある日、村人を助けるために、たおれた木の下敷きになり、自分の足を失ってしまう。
ベッドに寝たきりになってしまう男の子。
ところがある晩、眠ろうとする男の子のもとに、一頭の馬があらわれる。
馬の毛並みはつややかで、やさしい黄色のなかに、金色と銀色。星の色をした馬は、男の子につげる。
「わたしと一緒に、旅に出よう」