ちっぽけな世界の片隅で。
(2)
「手、色やばいだろ?」
パッと広げられた両手のひらは、炎みたいに、真っ赤だった。
赤は赤でも、皮膚の血のめぐりとはちがう、赤。
下から浮かび上がってくるのではなく、表面にはりつけられたような原色の赤が、数メートル向こうで披露されている。
「まだまだだけど、今から球技大会の応援幕作ろうってなってさ、クラス全員で、絵の具塗って手形押したんだけど、ポスターカラー塗って放置してたら、やばい。ぜんっぜん取れねー!!」
「うっそ、お前、ちゃんと洗ってねーだけだろ!!」
「洗ったって!かなり真剣に水と向き合ったって!!」
お笑いの会場みたいに、ゲラゲラ、ハッハッハ、ヒャッヒャッヒャア、とにぎやかだ。
でも、ここは、お笑い会場じゃなくて、『松尾塾』っていう学習塾。
当然、そんな話ばかりしていれば、松尾先生からお怒りの声が飛ぶ。
「田岡くん!だまってプリントやる!!」
先生に怒鳴られた田岡は、含み笑いではぁい、と言うと、プリントに視線を戻した。
「手、色やばいだろ?」
パッと広げられた両手のひらは、炎みたいに、真っ赤だった。
赤は赤でも、皮膚の血のめぐりとはちがう、赤。
下から浮かび上がってくるのではなく、表面にはりつけられたような原色の赤が、数メートル向こうで披露されている。
「まだまだだけど、今から球技大会の応援幕作ろうってなってさ、クラス全員で、絵の具塗って手形押したんだけど、ポスターカラー塗って放置してたら、やばい。ぜんっぜん取れねー!!」
「うっそ、お前、ちゃんと洗ってねーだけだろ!!」
「洗ったって!かなり真剣に水と向き合ったって!!」
お笑いの会場みたいに、ゲラゲラ、ハッハッハ、ヒャッヒャッヒャア、とにぎやかだ。
でも、ここは、お笑い会場じゃなくて、『松尾塾』っていう学習塾。
当然、そんな話ばかりしていれば、松尾先生からお怒りの声が飛ぶ。
「田岡くん!だまってプリントやる!!」
先生に怒鳴られた田岡は、含み笑いではぁい、と言うと、プリントに視線を戻した。