ちっぽけな世界の片隅で。

ほうほう、なるほどね、先生。


・・・わかるような、わからないような。


男子たちが静かになったあと。カリカリ、とシャーペンが紙をひっかく音だけになって、そうしたら、カエルか虫かの鳴き声が、じわじわと耳に入ってくる。

音は、すきまを見つけると、すぐに入り込もうとしてくるから。それはきっと、田舎でも都会でも、一緒だ。

本当に音のない世界って、じつはけっこう、なかったりする。


プリントの終盤になったとき。

グッと力を入れると、シャーペンの芯が引っ込んで、「3」がミミズみたいな字になってしまった。

ノックしても、出てこない。HBの芯。もう、芯の長さがないのだろう。入れ替えないと。

細長いケースのフタをあける。

一本だけ出そうと、そうっと振ったつもりだったのに、まっくろの雪崩みたいに、全部手のひらに出てきた。


・・・そういうの。


そういうことだけで、わたしの集中力はポッキリ、まっぷたつに折れてしまう。

集中力なんて、シャーペンの芯みたいなものだ。細い。心はせめて、もうすこし太いといい。

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