ちっぽけな世界の片隅で。



塾が終わって、田岡たち数人の男子は、自転車にまたがって帰って行った。

行きも、帰りも、わたしは徒歩だ。家から近いから、この塾を選んだ。


クラスには、大型の学習塾に通ってる子もいるけど、街に出るには親の送り迎えが必須。もしくは、電車。

うちの親は、わたしだけのために車を出動させることなんてしないし、かくいうわたしは、勉強のために電車にゆられるなんて、まっぴらだ。


家までの道を歩きながら、携帯の画面をノックする。

ブックマークしてある、『トモダチフォルダ』のアドレスに、ひとつひとつ、アクセスしていく。

更新されている、クラスの子のブログを見て、コメントを入れる作業。

この作業が、塾帰りの時間に、ちょうどいい。


「おいしそう」
「すごいねぇ」
「たのしそうだねぇ」


お、す、た、とだけ入れれば、予測変換に、そのコメントが出てくる。

毎日そればっかり、使っている証拠だ。


代わり映えがないけれど、必要とされているのは、文章力なんかじゃない。大事なのは、事実だけ。

いいなぁってかんじの、コメントをのこす。その事実。


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