ちっぽけな世界の片隅で。


想像しようと試みなくても、簡単に浮かぶ。

このメールを打っているときの、アキの顔。

のっぺらぼうとはほど遠い、わたしには絶対できない、焼きたての、ふっかふかのホットケーキみたいな。


スミトモくんの話をするとき。というか、名前を出しただけで、アキはいつもそんな顔をする。

スミトモくん本人と話しているときのアキは、さらに、その上にバターをとろかしたよう な笑顔だ。

じゅわーっと。あ、ホットケーキ、食べたくなってきた。


寝る前におなかすかしてる場合じゃないよな、と思いながら、ベッドに倒れ込む。携帯と、わたしの体が一緒に、スプリングの上ではずむ。


・・・さあ。

わたしは、大きく息を吸い込んだ。


電気を消す。携帯の、音も消す。枕の周辺を手でさぐり、リモコンをつかむ。

水色ステレオの、リモコンだ。たくさん並んだボタンのなかから、いつも触れているボタンを瞬時にとらえ、ラジオをつける。


さあ、わたしの、わたしだけの、時間だ。



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