ちっぽけな世界の片隅で。
先生はわたしたちに勉強を教えて、保健室には行かなくて、ときには怒って、テストの採点をして、わたしたちをランク分けするイキモノ。
じゃあ、わたしたちは?
「ジッシューウ!!」
鉄砲玉みたいなかけ声とともに、ポーンと頭上を通過したのは、丸められたゾウキンだった。
どうやら、男子たち数人が、野球の まねごとを始めたらしい。
思わず、まゆを寄せる。うるさい。それに、きたない。
目を細めたら、ゾウキンから舞い落ちる深緑色のバイキンが見えそうで、わたしはため息をつく。
先生の体調不良のため、自習。
という事象に、ガッツポーズするのが、わたしたち生徒というイキモノ。
自主学習にはげむなんて、ごく少数だ。もうあと一週間もして、期末テストが近づいてくれば、みんな必死にノートを借りたり、写したりするのだけれど。
わたしも、ノートを広げるのはカタチだけ。
真っ白いノートを前に、わたしは、昨晩のことを思い出していた。