ちっぽけな世界の片隅で。
(4)
ざぶん。
深い海に、もぐりたい。深くて、薄暗くて、ひんやりしたところ。
ラジオから流れる、低い声。
聞きたいのは、テレビのなかで弾ける、笑い声なんかじゃない。
高い声。ばかにする声。怒る声。死ねよ、の声。やっぱりぃ、の声。ねえ、好きなんでしょう?の声。
自由に泳ぎたいわたしを、網で捕まえようとする。
何層にも、何層にも、重なって。その網の目を必死にくぐりぬけて、網の目が重なるほど、小さくなればなるほど、困難で、でも。
脳みその網の目は、逆。大きいと、せっかく覚えた単語が、こぼれ落ちてしまう。
細かくあるべき網と、あらくあってほしい、網の目。
「テスト、返ってきた?」
夕飯どき。カレーから舞い上がる、ふかふかした湯気の向こうで、お母さんが聞いてきた。
舌にのったルーが、とたんに辛く、苦くなる。
まるいはずのスプーンは、わたしに向けられた刃先に早変わり 。痛い。舌がビリビリする。
せき込みながら、わたしは言った。
「そんなの、昨日の今日ですぐに返ってくるわけないでしょ!?」
「は?なに怒ってるのよ」
ざぶん。
深い海に、もぐりたい。深くて、薄暗くて、ひんやりしたところ。
ラジオから流れる、低い声。
聞きたいのは、テレビのなかで弾ける、笑い声なんかじゃない。
高い声。ばかにする声。怒る声。死ねよ、の声。やっぱりぃ、の声。ねえ、好きなんでしょう?の声。
自由に泳ぎたいわたしを、網で捕まえようとする。
何層にも、何層にも、重なって。その網の目を必死にくぐりぬけて、網の目が重なるほど、小さくなればなるほど、困難で、でも。
脳みその網の目は、逆。大きいと、せっかく覚えた単語が、こぼれ落ちてしまう。
細かくあるべき網と、あらくあってほしい、網の目。
「テスト、返ってきた?」
夕飯どき。カレーから舞い上がる、ふかふかした湯気の向こうで、お母さんが聞いてきた。
舌にのったルーが、とたんに辛く、苦くなる。
まるいはずのスプーンは、わたしに向けられた刃先に早変わり 。痛い。舌がビリビリする。
せき込みながら、わたしは言った。
「そんなの、昨日の今日ですぐに返ってくるわけないでしょ!?」
「は?なに怒ってるのよ」