ちっぽけな世界の片隅で。

こうやって、テスト・テスト・勉強って追われて、追われるままに走っていたら、気がつくと大人になっているものなのだろうか。


たまに、ふと、こわくなる。

もし落ちこぼれて、走るコースからはじき出されてしまったら。そういう、こわさじゃなくて。

走って、走って、気がついたら食卓で、自分もいつの間にか、スパイスと醤油入りのカレーを食べているかもしれないっていうことに。

子ども扱いされるのは、しゃく。でも、なんのために、大人になるの?

年を重ねれば大人なの。大人になるために、将来のユメを決めるの。


わからない。

わたしが握るシャーペンは、いっこうに走り出さない。


茶色く汚れた、白いうつわ。

食 べ終わったソレをキッチンの水場に持って行き、置くときに、ゴチン!と荒々しい音をたててしまった。

洗いものをしている、お母さんの手が止まる。目が、わたしを見るのがわかる。

きまりが悪くなって、視線をそらしたまま、言った。


「…ゴチソウサマ」


お母さんの手は止まったまま。

水道の蛇口から、水はジャージャー流れっぱなしだ。


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