ちっぽけな世界の片隅で。
こういうとき、個人塾はマイナスだ。
大型の、人があふれる塾なら、たとえ結果が張り出されたって、たくさんの名前のなかにまぎれてしまえるのに。
そして、もうひとつ、わたしを逃してくれなかったもの。
勉強が終わる時間になり、塾から出た。そこで待ちかまえていた人影に、わたしは本日二度目のガクゼン、を味わった。
「田岡 !三橋!!」
人影の正体は、アキとスミトモくんだった。
スミトモくんが、塾のとびらから出てきたばかりのわたしに向かって、手招きする。
「おお、スミ!!どした!?」
元気のあまった声。わたしの後ろにいた田岡が、わたしを追い越して、二人のほうに駆けていく。
スミトモくんは、水色のバケツをかかげて、満面の笑みで言った。
「今から花火しようぜぃ!!」
三橋も、と名指しして、スミトモくんは、わたしを見た。
そのとなりで、ほほえむアキ。
目の前の光景と、状況に、わたしは本日三度目のガクゼン、におちいった。
待ってたよハチ、みたいな純粋な笑顔を作っているけれど。わたしはその裏に、先日野球部の朝練を見ていたときの、アキのたくらみ顔をみていたのだ。