ちっぽけな世界の片隅で。
グッスリ眠ると夢をみないっていうのはウソで、人間は、必ず毎回夢をみているんだって、テレビか本かで見たことがある。
起きるタイミングによって、それを覚えていたり、すっかり忘れていたりするんだって。
もし、いい夢だったなら、昨日は残念だったな。
でもわるい夢なら。
まあるい雲を、カサの先端で、串刺しにする想像をする。三つ連続で刺したら、みたらしだんごみたい。白いけれど。
わるい夢なら、忘れる機能って、すごく便利だ。
忘れるって、大事。わるいことをずうっと覚えたままじゃなきゃいけないのなら、脳みそも心もパンクしてしまう。
学校がそろそろ見えてくるというところで、わたしは偶然、田岡を見かけた。
田岡もわたしと一緒で、とても眠そうだった。
短めの後ろ髪には、ダイナミックな寝ぐせ。気づいていない のだろうか。
しっぽのように、髪束が直角にはねている。理科の教科書で見た、カブトガニみたい。
頭がうしろに反り返りそうなくらいの、大あくびをした田岡は、そのときはじめて、わたしに気づいた。