ダサい恋人



あたしはこの気持ちを正直に佐伯尚に話した。


長い沈黙が続く…。



でも…その沈黙を破ったのは、佐伯尚だった。


「後悔すんなよ?」


「えっ…?」



「あの時、俺を振らなきゃよかったって後悔なんかすんなよ。」


眉を下げていてもくしゃりと笑う佐伯。

「……佐伯」


佐伯の言葉に、涙が滲み出てくる…。



「泣くんじゃねぇよ。」


切なそうに笑いながら頭を撫でる佐伯…。



それはあたしには慰めにならなくて、涙がこぼれてしまう…。



「ごめんね…あたし…」



「千歳は何も悪くねぇよ。謝ることじゃねぇ。」


……ただ、と佐伯が一言付け足した。



「千歳…逃げるんじゃねぇ。小山と伝えろ。」




< 427 / 444 >

この作品をシェア

pagetop