ダサい恋人



佐伯尚の顔は真剣そのものだった。


「お前は、三野が好きって伝えないとダメだ。
……他の奴に邪魔なんかされて悔しくねぇのか?」


そんなの……

「……嫌だ。」

そう答えたあたしに佐伯はニッコリ笑った。


「だったら行けよ。
お前なら、大丈夫だ。」



微笑んだ佐伯の顔は、怖くもない


不適な笑みでもない…。



優しい笑顔だった…。


「…あたし、行ってくるね。」


あたしは、いつの間にか涙が止まっていて、立ち上がっていた。



あたし…逃げてたんだ。


…勝美の株とか、釣り合うとか…外見ばっかり気にしてたんだ。



「あたし…真っ直ぐに伝える。」



伝える…。



小山さんにも。



勝美にも。


佐伯尚はそんなあたしを見て、微笑み「行って来い」と笑った。



あたしは進まなきゃ…。


伝えなきゃ!




< 428 / 444 >

この作品をシェア

pagetop