ダサい恋人



安心と緊張で涙が溜まる…。


でも、泣いちゃダメ…。


ちゃんと小山さんに伝えなきゃ…。



「……小山さん」


あたしは小山さんに近づく。


……小山さんは、キッとあたしを睨む。


『あんたのせいで、あたしはこんな目にあったのよ!』


目であたしに訴えている。


……ダメだ…。


涙出ちゃう…。


……けれど…逃げたりはしない。



あたしは小山の頬を叩いた。


……手を上げた瞬間…震えてた。

勝手に出てしまったこの1つの仕返し。

ごめんなさい。小山さん


でもあたし…

「あたしは…勝美が好きなの!!」


あたしは小山さんに与えたその痛み、そのものがあたしが勝美を好きって思う重さ。


いつも一緒にいるけれど、いつか消えてしまう事を恐れる痛み。


そのものなんだ。



自分の声が…響く…。



「あたしは…勝美が好きなの。
別れろなんて、小山さんが決める事じゃない。

……あたし達だから。」




やっと言えた…。


ずっと言いたかったこの言葉。


「………っ」



小山さんは顔を伏せながら、資料室を出ていってしまった。


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