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「ほんっと、嫌な奴だよね!」


部室に向かう道すがら、明衣は怒りを滲ませて言った。五月女が首をかしげ、不思議そうに問う。


「何のこと?」

「あいつよ。逸識!」


憎々しげにそう言って、明衣は大股で廊下を歩いていく。


「人を苛つかせる天才よね!」

「確かにそうかも知れないけど、それだけじゃないような気がするな」

「どういうことよ?」

「ん~‥‥何て言うんだろ、焚き付けたように見えたんだよな」

「焚き付けた?」


巡が訝しげにまゆを寄せる。五月女は続けた。


「わざと煽って、闘争心を燃やさせたんじゃないかってさ‥‥考えすぎか」

「買い被りすぎ! あの性悪がそんなこと考えてるわけないじゃん!」

「そーッスよ。お人好し過ぎるッス、五月女先輩は」

巡も同じように鼻を鳴らした。




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