a☆u★c-G2-!
「ごめんなさい」
ソファーに座った依頼人の前で土下座をするのは初めてだ、と明衣は思った。
依頼人の話によると、何度かノックをしたが応答が無かったため部室の前で待っていたのだという。
思わず巡に視線を集めると、彼女は「今鼻風邪ひいてるんスよ」と苦い顔をした。
「あ、や。良いんですよ。僕ももう少しノック大きめにすれば良かったし…」
控えめな口調で頭を掻く男子生徒の頬は少しだけ紅潮している。どうやら緊張しているようだ。
五月女がそんな彼の様子に気付いてか、書類にペンを走らせながら優しい口調で尋ねる。
「学年、クラス、名前を教えてくれるかな?」
男子生徒は「は、はい!」と不自然に大きな返事をしてから、姿勢を正して答えた。
「1年F組糸田真幸(いとだ まさき)です!今回はaucの皆さんに依頼があって……、その、何でも請け負ってくれるって聞いたから……」
糸田は言いながら楡の方を一瞥する。
どうやら楡からaucの話を聞いて来たらしい。
「何でも請け負うよ。話してみて!」
五月女が得意気に言うと、糸田は俯いていた顔を上げて、真っすぐ前を向いた。
「うちのねーちゃんの結婚式……邪魔してほしいんだ」