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糸田は続ける。


「結婚の相手は、大手企業の社長の息子…かなりの大金持ちなんです。彼は道端でたまたま出会った姉に一目惚れして……父と母に、金をちらつかせて婚約を成立させてしまったんです」

「サイテーな男ね」


明衣は苦々しく吐き捨てる。


「姉には高校時代からずっと付き合ってる彼氏が居て、もうすぐ結婚しようって以前話していたんです。それが……急にあの男の人が姉と結婚式を挙げるって言い出して…」

「彼氏さんの方もそいつの圧力で丸め込まれたって訳か」


コーヒーカップを持ち上げて楡が呟けば、糸田は首をゆっくりと縦に振った。


「両親も、彼氏さんも身動きが取れない今、僕がどうにかするしかないんです。でも、僕に出来ることなんか全然小さい。だから、皆さんのお力を借りたいんです」


お願いします!と勢い良く頭を下げられ、明衣は少し困ってしまったが、すぐに力強く答えた。


「良いわ。その依頼、承りました!」


その言葉の後に、糸田の顔がぱあっと綻んだ。






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