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最近真幸がよそよそしい。
早智はそう感じていた。
そろそろ難しい年頃だから仕方ないことだろうと思ってはいたのだが、近頃目も合わせようとしてくれない。
さっきも、帰ってきたと思ったらさっさと部屋に行ってしまった。
彼がああなった時期はいつだったかと思い巡らしてみると、それは確か、自分が富崎グループの息子と結婚すると話した時だった気がする。
父や母は喜んでくれたが、真幸だけ表情が浮かばず、何か思い詰めたような顔をしていた。
それもそうだろう。
早智には中学生の頃からずっと付き合っていた男が居たのだから。
(龍之介……)
早智は携帯電話の履歴を眺めながら、自身が愛している彼氏・樺嶋龍之介(かばしま りゅうのすけ)の名を指でなぞる。
富崎グループの息子との結婚をせがまれ、龍之介とは無理矢理別れさせられる形になった。
何度も枕を濡らしたし、電話やメールをしたいと思ったこともあった。
しかし、相手は日本でも有名な大企業の息子。何をしでかすかがわからない。
早智は消去するように言われていた龍之介の連絡先を画面に移すが、結局指をさ迷わせ、“削除しますか?”の問いの“いいえ”をクリックして、携帯電話を閉じた。