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明衣と楡は走る。

車を降りて数分、黒いスーツを着た屈強な男たちが二人を追いかけて走ってきたので、何だかドラマみたいだなと場違いなことを思う。

明衣は内心慣れないヒールに音を上げていた。

後ろの男たちが、スピーカーのようなものでこちらに呼び掛けてくる。


『そこの二人、止まれ!』

「止まれって言われて止まるわけないでしょーよ!」


ぜぇぜぇと息を吐きながら悪態を吐く明衣。

楡は面倒臭そうに溜息を吐き、狭い道を抜け、人通りの多い道に出た。


「これで少しは撒きやすくなったでしょ」


そう言いながらペースを落とし、後ろで疲れ果てている明衣に振り向く。

彼女は足を押さえて蹲り、泣きそうな声で言った。


「足、痛い………」

「………」


楡は屈んで、ドレスをめくって明衣の足を見た。

ヒールの高いパンプスの所為で、足が擦れて赤くなっている。

傷の具合を見ようとした楡だったが、追っ手の姿を発見したので舌打ちをして立ち上がった。

同じように立った明衣を一瞥し、楡は頭を掻いて、彼女の手を思い切り引いて、


「ちょ、ちょっと!?」


――抱き上げた。






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