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改札を抜け、電車の席に着いた早智は、すぐに電話を片手に席を立った。

不思議そうに首を傾げた龍之介だったが、すぐに早智の表情から彼女の行動の意図を察した。

早智は電話帳から、富崎の名前をクリックすると、電話を掛けた。

ワンコールしないうちに電話がとられ、切羽詰まった声がする。


『早智か!?今どこだ!!』

「もう近くには居ないわ」


富崎の声とは反して、至って冷静に早智は返す。電車の音が電話越しに聞こえるのか、『電車の中か!?』などと叫ぶ声がする。


「富崎さん、私…あなたとは結婚できない」

『え…』

「私には、ずっと好きな人が…付き合ってる人が居たの。それを、あなたはお金で引き裂いた」


静かな声だが、そこからは怒りが読み取れる。富崎は何も言えずに黙った。


「確かに、あなたは私にたくさんのものを贈ってくれた。それは感謝するわ。だけどね、1つ知ってほしいことがあるの」


早智は携帯電話の電源ボタンに指をかけた。



「女心はお金で買える程安くないのよ」


そこで、彼との通信は一切途切れた。






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