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黒服の男たちは戸惑ったように顔を見合わせ、富崎と連絡を取るために無線に何かを話している。

すると、落胆したような彼の声が無機質な黒い機械から漏れた。


『俺、ふられちゃった……』


男たちは驚きと諦めが入り交じったような複雑な表情で、彼の言葉の続きを待った。


『女心は金で買えないって言われて…、俺、世の中に金で買えないものがあるなんて、知らなかった……』


わがままばかり言って、金に物を言わせていただけあって、早智に言われた言葉が堪えているのだろう。

声にはまったく覇気が無く、男たちを叱責する様子も見られない。

男の一人が言った。


「実は、今我々が必死で追い掛けていたのは、お嬢様に扮した囮でした。姿形が似ていたので、気付けませんでした」

『……そうだったのか』

「囮をしていた少女も、お嬢様と同じ事を言ってましたよ」


無線の向こうは静まり返っている。

どうやら相当なショックを受けたらしい。

結局、何か慰めの言葉を探しながらゾロゾロと立ち去っていく彼らを見送って、明衣と楡はその場にしばらく立ち尽くしていた。







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