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車の中、不機嫌そうに頬を膨らませた明衣が発する怒りのオーラで、何処か気まずい空気が漂う。

普段空気が読めない五月女も、何かを察してなのかいつもよりおとなしい。

タイヤとエンジン、そして軽快なラジオの音だけが、車内で場違いなBGMのように流れていた。

そんな状況の中、学校の近くに差し掛かる。

てっきりそれぞれを自宅に送り届けてくれるのではと思っていた明衣は、不満そうに口を開いた。


「送ってくんないの」

「送ってくよ」


楡は機械的にそう返した。それらの声に釣られて、他の4人の顔が上がる。

楡は相変わらず抑揚の無い声で続けた。


「卯月の足、手当てした後にな」

「…………えっ」


頼んだぞ巡、と楡は付け加えて、職員駐車場に車を停める。

顔を真っ赤にした明衣をニヤニヤして見ながら、巡は保健室の鍵を借りに走っていった。






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