ノンフィクション

「え~・・・でも、僕、昨日歴史で教わったよ。この世界はヒトラーが作ったんだよヒトラーが・・・。」


 言うと、男はクスクスと笑う。


 確かに、大事二次世界大戦が世界に及ぼした影響は計り知れない。


 この国の今が平和なのも、これほど世界が発展したのも、第二次世界大戦の影響があったからだろう。


 ・・・・・・・・・・・・だけど、それは、誰かが・・・いや、私が彼を作り、彼女がその男に対して、そんな物語を書いたから出来上がった『過去』だ。


「そうね・・・誰かが、そういう物語を書いたら、そんな『過去』が出来上がったのね。」


 世界は顔を上げない。


 彼女の目はひたすらスケッチブックを眺めながら筆を走らせているだけだ。


「ん~よく分からないな・・・。」


 男は、さらに不思議な顔を浮かべる。


「守、あなた、ヒトラーにあったことある?」


 今度は女からの質問。


 顔は上げない。


 彼女はひたすらスケッチブックに筆を走らせている。


「あるわけないよ。もう死んだ人だもの。」


 守と呼ばれた男は、そういうと『世界は馬鹿だね』と言って、ケラケラと笑う。


 しかし、世界の表情は崩れない。


 顔を上げず、必死にスケッチブックに筆を走らすだけだ。


「なら、どうしてヒトラーが「実在」したなんて、言えるのかしら?」


「ん~・・・どうしてだろう?」


 そういえば、変な話だね。


 ・・・と、ここで初めて守は不思議な顔を浮かべた。
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