ノンフィクション

「いい事を教えてあげる。」


 そこで、世界は始めて顔を上げた。


 月明かりに照らされ、妖艶に美しい彼女の顔は、まるでかつてアダムをそそのかした、美の悪魔・・・リリスを思い出すほどに、邪悪でそれでいて美しい。


「この世界はね。私が描いたからこんな世界をしているの。」


「世界が?」


 そうよ。


 と、世界はにやりと笑みを浮かべた。


「この世界はね・・・常に一人の絵描きによって作られるの。そこに物語をつけるのは、一人の作家。」


 世界は、そう言うとさらに笑みを浮かべる。


 過去を作れるのは、作家だけ。


 今を作れるのは、絵描きだけ・・・。


 だったら、未来を作るのは一体誰?


 そして、彼女のスケッチブックに新しい絵が完成する。


 それは、真っ黒い、透き通るような、黒水晶・・・。


 さぁ、素敵な物語の幕をあけるとしましょうか?


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