ワケアリ夫婦っ!!
「藍川日向さん、クランクアップでーす!! お疲れさまでした!」
「ありがとうございます!! みなさんおつかれ様です!!」
一人のスタッフから、花束を受け取った。
周りは、拍手に包まれている。
「そして、夏紀さんクランクアップおめでとうございます!!」
今度は女性のスタッフが、俺の隣で微笑んでいる夏紀に、ピンク色の花束を渡す。
「わぁ、かわいい!! みなさん本当にありがとうございましたっ!」
深々とお辞儀をした夏紀は、俺のほうにも笑顔で話しかけた。
「藍川さんも、お疲れ様でした。あたし、藍川さんと共演できてとっても嬉しかったです!!」
「……あぁ、お疲れ様」
スタッフがいる手前、無視するわけにもいかなく、心無く返事をする。
それが気にくわないのか、一瞬笑顔が消えると、俺にしか聞こえない声で囁いた。
「日向くん、この後四階の喫煙室前で待ってるから。来てくれるよね?」
「…………」
「最後に言いたいことがあるの」
………最後?
「どういう意味?」
「とにかく、待ってるから」
そう言った夏紀はスタッフにまた深くお辞儀して、マネージャーと収録スタジオを出て行った。
無視して帰ろうとも思ったが、夏紀の"最後"という言葉が気になり、もう一度スタッフに挨拶して俺もスタジオを出た。