ワケアリ夫婦っ!!







その一 "デキる女大作戦"






「たっだいま奈央ー!」






夜、仕事を終えた日向が、いつも通り中津さんに送られて帰ってくる。





「おかえりなさいませ」





「………奈央?」





玄関先で三つ指をついて出迎えるあたしに、日向は戸惑っている様子。




だって、今日のあたしは一味違うのだから。




「それでは日向さん、また明日の朝お迎えに上がります」





そんなあたしに見向きもせずに帰ろうとする中津さんを、あたしは慌ててひき止めた。





「なっ、中津さん!」




「……何かご用でしょうか」




あきらかに嫌そうな表情をしながら振り返る彼に、あたしは負けじと微笑みかける。





「あの、良かったらうちでお食事されていきませんか?」




「食事ですか?」





「はい」





玄関に立ったままの日向は、何事だという風に首を傾げている。




「お言葉ですが、まだ仕事も残っていますので」




やっぱり……絶対断られるとは思っていた。





が、今日のあたしはここで諦めるあたしじゃないのだ。




「そう言わずに、少しだけですから。いつもお世話になってるし、お礼がしたいんです」




「しかしですね……」





「まぁまぁいーじゃん中津」





そこへ、日向の助け船が出される。





「奈央の手料理まじ美味しいからさ。どうせ中津忙しいからって、まともに飯も食ってねぇだろうし」





南さんには、あたしの手料理を食べさせるのをあれほど嫌がってたくせに、今日は珍しく自分から進める日向。





もしかしたら、それほどに中津さんはまともな食事をとっていないのかもしれない。





それなら、なおさら食べてほしいなぁ。




「……そこまで言うなら。十分だけおじゃまさせていただきます」





「………よしっ」





ようやく折れた中津さんに、あたしは小声でガッツした。






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