ワケアリ夫婦っ!!
なんとか、ギリギリ電車の時間には間に合いそう……。
ダッシュで駅のホームにたどり着いたあたしは、ホッと胸を撫で下ろす。
すると、後ろのほうから。
「奈央ーっ!」
誰かの呼ぶ声がして、振り返った。
あたしの名前を呼んでこっちに向かいながら、手を振っているのは同じクラスの真希だった。
「おはよー♪」
「おはよっ」
彼女自身によく似合っているショートボブの髪を揺らしながら、あたしの所へ歩み寄る。
真希とは、それほど仲が良いわけじゃないけど。
クラスが同じで、掃除場所も同じだから、たまに話をしたりする。
笑顔が可愛いくて、人懐っこい性格だからわりとあたしは好きだったりする。
「せっかくだし、学校まで一緒に行こーよ!」
そう言った彼女は、ニコッと笑ってあたしの肩を叩いた。
「うん、いいよ」
そこへ丁度よく、学校への電車が到着してあたしたちは二人で乗り込んだ。
「てゆうかさっ、聞いて!」
運よく空いていた入り口付近の席に隣同士で座ると、いきなり真希が興奮したように大きな声を出す。
「ど、どうしたの?」
驚いたあたしは、目を丸くして真希に聞き返した。
「あたしねっ、昨日あの藍川日向に会ったの!」
びくっ。
予想もしてなかった言葉に、一瞬肩が揺れる。
「……会ったって?」
「あぁ、会ったっていうか、正確に言うとドラマの撮影現場に遭遇しちゃってさ」
なんだ、そう言うことか……。
変な意味じゃないことに、少しホッとする。
会ったなんて言うから、何事かと思っちゃったよ。