ワケアリ夫婦っ!!
聞き覚えのある声が、あたしの名前を呼んだ。ふと横を見ると。
「煌星くん!!」
あたしの名前を呼んだのは、同じバイトの煌星くんだった。
「つーか、前から思ってたけど。"煌星"でいいよ。歳は一緒なんだし」
少し眉をひそめて穏やかな声でそう言った。
「あ、うん。………煌星?」
「ん」
「なんか、慣れないなぁ」
男の人を呼び捨てにするなんて、日向以外じゃ滅多にいないし。
ちょっと、慣れるのには時間がかかりそうかな……。
「‥‥今井、犬飼ってんの?」
「へ?」
「それ、ドックフードでしょ?」
そう言って、細長い人差し指を、あたしの持っているドックフードに向けた。
「飼ってるっていうか、今日飼い始めたんだけど……ね」
「へぇ、犬種なに?」
「白い豆柴!!」
「まじで、うちと一緒」
へっ、一緒って……。
「煌星く……じゃなかった。煌……星……も犬飼ってんの!?」
あたしが驚いた様子でそう言うと、クスッと笑って無造作にセットされている前髪をかき分けた。
「飼ってるよ、茶色の豆柴」
「えーっ、そうなのっ!? 知らなかったあ」
「だって、言ってねぇし」
………そ、そうですよね。
相変わらず、落ち着いてるなぁ。
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