ワケアリ夫婦っ!!
孤独だった彼へ

「遅いなぁ……日向」
ちょっとでかけると言ったまま、一時間近く帰ってこない日向に、あたしは妙な違和感を感じる。
なんか……嫌な予感。
お風呂から上がって、すっかり乾いた髪をくしゃくしゃにしながら、あたしは日向の帰りを待っていた。
すると………。
「奈央!」
ガチャリと玄関の開く音と、あたしを呼ぶ愛しい人の声。
一瞬でぱぁっと笑顔になり、あたしは玄関へと走る。
「日向! おかえ………り……」
しかし、玄関へつくと同時に、そこにいた人を見てあたしは固まった。
「………どちら様?」
艶のある黒髪は、ワックスで逆毛をたてられていて。
切れ長い少しつり上がった瞳。
日向より高い、スラッとした長身の彼。
ワイルドな大人。という言葉は、この彼にピッタリだ。
形のいい薄い唇が、ゆっくりと開かれる。
「……寝ぼけてでもいるんですか」
「へ………?」
その声、話し方を聞いてようやく彼だと分かる。
「もしかして、中津さん……ですか?」
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