ワケアリ夫婦っ!!
「……煌……星」
さっきまでは、平気だったはずなのに。
その姿を見ると、勝手に頭が昨日のことを思い出してしまう。
震えそうになる足に必死に力をいれた。
正直………怖い。
早く、この場から消え去りたい。
でも………それより強く思う。
"もう、日向にあんな笑顔をしてほしくない"と。
「君が煌星さん……ですか?」
そんな中、一番最初に口を開いたのは中津さん。
「……おれの名前を知っているところを見ると。お前が今井の彼氏らしいな」
「やはり、君が卑怯な手でしか女の子を手にいれられない"泥棒いぬ"みたいですね」
「そんなこと、彼女を連絡もなしにほっとくような男に言われたくねぇな」
二人とも感情的になるわけでもなく、一つも表情を変えずに言い合う。
「何しに来たわけ? 自分の女を取られたから、俺の面でも殴りに来た?」
「本当はそうしたいんですけどね。お前みたいなクズ殴ったところで寝覚めが悪い」
「なんだって……?」
「聞こえませんでしたか。手癖だけじゃなく、耳も悪いらしい」
「てめぇ」
しかし、段々と悪い方向に進んでいく、二人の言い合い。
さすがに中津さんは大人だろうから、高校生の彼に手を出すことはないだろうが……。
軽い挑発にのってしまった煌星は、今にも中津さんに向かっていきそうだった。
< 261 / 384 >

この作品をシェア

pagetop