ワケアリ夫婦っ!!
「久しぶりだぁ……」
ようやく実家の前について、しばらくぶりに見る家の様子に懐かしさを感じる。
心がジワって暖かくなるような……そんな気持ちだった。
一応、鍵は持ってるけど、ママたちは今の時間いるのかな?
たぶん、パパは仕事だろうし。
普通のサラリーマンのパパと、専業主婦のママ。
兄弟はいないけど、うちはごくごく普通の家庭だった。
だからこそ、日向と結婚するときは、少しだけ……ママたちを寂しくさせてしまうんじゃないかという、不安もあった。
だからこそ、こうやってたまに遊びに来ることで、少しでも喜んでもらえたらいいな……。
ちょっと緊張しながらも、玄関のドアを引く。
ガチャリと重いドアが開いて、一気に懐かしいうちの香りが鼻をくすぐった。
少し独特な趣味のママが買った、変なカエルの置物や、あたしが小学校の時に作った造花が飾ってあって。
廊下の向こう側にある少し開いたリビングの扉からは、ほんのりカレーの匂いが漂ってくる。
懐かしい……昔のままだ。
学校から帰ると、あの扉の向こうからママが「おかえり」って言ってくれて………。
「あら奈央、おかえり♪」
「……………」
「奈央?」
「………マ……マ」
「どしたの、固まっちゃって」
「ふぇっ……ママーッ!」
「ギャーッ! 何で泣くのーっ!?」
まるで、昔みたいにリビングの扉からヒョコッと頭を出したママに、あたしは泣いてしまった。
分かんない……分かんないけど、なんだか安心してしまった。
何も変わってない、この光景に。