ワケアリ夫婦っ!!






「パパ、まだかな」





「うーん、そろそろだと思うんだけどね………あ。でも今日は少し遅いかも!」




「え……なんで?」





「ふふ、まだヒミツ♪」




「………?」





せっかくママと協力してごちそうを作ったというのに、帰宅時間を過ぎても帰って来ないパパ。



そして、遅くなる理由を知っているらしいのに、何も教えてくれないママ。




……なんか、変なの。




そう思った時だった。




「……帰ったぞ」




玄関のほうから聞こえた、聞き覚えのある落ち着いた声。




「奈央、行っておいで」




ママはにっこりそう微笑んで、あたしに視線を送った。




なぜだが分かんないけど、少し緊張する胸を押さえてあたしはリビングから出る。




向こうのほうで、腰を下ろして靴を脱ぐ後ろ姿。




小さい頃、よくあたしをおんぶしてくれた広い背中。





「おかえり……パパ」



後ろからそっと声をかけると、頭を上げて振り返る。



少し垂れたその目にうつる、あたしの姿。



「久しぶりだな、奈央」




頑固で意地っ張りな性格のわりに、どうも憎めない優しい笑顔。




昔のままだ。



小さい頃から変わらない、この安心する感じ。




また感激して泣きそうになりのをグッとこらえて、あたしはパパの鞄を持つ。






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