ワケアリ夫婦っ!!
「ありがとうございました……本当に助かりました」
「あ、いいよ? 別に」
無事にあのおっさんを家まで送りとどけて、家の敷地から出ると彼女が深々と頭を下げる。
「じゃあ……あたしはこれで」
「え、送るよ! こんな時間に女の子一人じゃ危ないし……」
「いっ、いえ! 大丈夫ですっ……家すぐそこですから。本当にありがとうございましたっ」
「あ………」
そう言うと彼女は、逃げるようにして俺の前から走り去ってしまった。
「まぁ……いいか」
家近いって言ってたし……何も追うことはねぇよな。
そう考えて、俺も帰り道を歩き出す。
そういえば、あの子の名前聞いてなかったな。
制服も着てなかったから、どこの学校の子かも分からない……。
………たくさん疑問はあるけど。
もう……いっか。
彼女と出逢ったのはただの偶然。
もう、きっと逢うことはないだろうし。