ワケアリ夫婦っ!!






この前より、少し散った桜の木。


風で、静かに揺れるブランコ。



俺が来たのは、彼女と出逢った公園だった。



相変わらず静かで、人の気配は全くない。




………逢えるわけないのに。



一週間前の今日、確かに彼女はここにいた。



だからって、今日もいるわけないのに。



俺の足は、勝手にここへと歩いてきてしまったのだ。



……ばかばかしい。



もう、逢うことなんてないんだ。



そう胸に言い聞かせて、俺は帰ろうと公園に背を向ける。



その瞬間、ぶわっと一瞬だけ強い風がふいて、まぶたを閉じた。


「……………え」



再び、まぶたを開けて目の前をの光景に戸惑う。






「………あっ……」




「……………ははっ」




そんな中、思わず笑ってしまったのは。




目の前にいる彼女が、俺より驚いた真ん丸い目をしていたから。





"また逢った"じゃない"また逢えた"。






ずっと、逢いたかった。


名前も知らない君に。







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