幕末怪異聞録


――――――――――――……




「――ん?」



ゆっくりとまぶたを開けた時雨は、重たい頭と強烈な気だるさに身を包んで起き上がった。


「あ!時雨目を覚ましたんだ!」


「うわー!!時雨え!すげえ心配したんだぞ!?」


入り口には水を張った桶を持っている沖田と、嬉しそうに尻尾を振る狼牙。


嬉しさの余り二人は大きな声を上げたため、隣の部屋から土方が出てきた。


「なんだ、時雨目ぇ覚めたのか。」


「そうなんですよ♪
時雨、三日も眠ってたから心配したんだよ!」


そんな嬉しそうにする三人に時雨はピシャリと言い放った。


「――るせえな……。

でけぇ声出してんじゃねえよ…。」


静かに言った割に時雨の声はよく響き、辺りは水を打ったように静かになった。


(うわぁ…。寝起き悪ー…。)


と皆が思ったのは言うまでもない。



< 109 / 321 >

この作品をシェア

pagetop