幕末怪異聞録
「ん?金か?
まぁ百両は冗談で、二十両で勘弁してやる。」
「そうか。それはありがてぇって、ちげえよ。」
「あれ?違うのか…。」
むぅ…っと顔をしかめる時雨を尻目に、些か言いにくそうに口を開いた。
「これはお前の兄貴からの伝言なんだがな……。
『西沢を追うのは止めて、母君と一緒に暮らせ。それが嫌ならば新選組の庇護を受けろ。』
とな。」
「うむ、両方断る。」
「そう言うと思った。」
ため息を吐いた土方は再び時雨に目を向けた。
「とりあえず今は体を元に戻せ。三日も寝てたんだ。動かねえだろ?」
「あぁ。また少しの間世話になるな…。」
「じゃあ体に気ぃつけろよ。」
土方は、時雨の頭を少し撫でて部屋を出た。
そんな時雨の内心は
(え?土方に頭撫でられた……。
なんかよくないことが…。)
とても失礼なことを思っていた。