幕末怪異聞録
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井上の部屋にお茶を出した時雨は土方の部屋の前に来ていた。
「土方、入るぞー。」
返事も聞かず入ったら、やはり土方は仏頂面を向けた。
「普通許可をもらってから入るもんだろ。」
「土方は除外されるんだ。」
「なんでだよ。」
「さあな♪」
「は?全く――」
「ほら、茶が冷めるから!」
そう言って早々に話を打ち切ってお茶を啜る時雨。
その様子がいたく不自然に見えた土方は、お茶に口にしてから口を開いた。
「明日ここを出るのか?」
「ん?あ、あぁ…。
よく分かったな。」
少しそわそわしている時雨に不振な目を向けながらも、詮索するのは止め、懐から二両出した。
それを見た時雨は一気に眉間に皺が寄った。